お釈迦様は仏様または仏像の名称と認識している方は多いでしょう。しかし、お釈迦様とは架空の人物なのか実在していたのか、実在していたのであれば何をした人なのかなど、お釈迦様について詳しく知っている方や説明できる方は、仏道に通じていない限りあまりいないのではないでしょうか。
ここでは、お釈迦様とはいったい何者なのか、仏教はどのようにして日本に伝わり、何を教えているのかなどについて説明していきます。
お釈迦様の誕生と修行をした理由
お釈迦様とは別名ブッダとも呼ばれる仏様で、仏教を開いた方です。架空の人物ではなく実在しており、約2,500年前に古代北インドの一部族「釈迦族」のゴータマという一族の1番目の王子として誕生しました。
母親は隣の国の出身で、お釈迦様を出産するための里帰り中、ルンビニ(現在のネパール) で出産したといわれています。それからお釈迦様は王子という恵まれた環境で何の不自由もない生活を送りました。
しかしいくら恵まれた環境であっても、人は何かに苦しんだり悩んだりするものです。お釈迦様は、人が生まれて成長し大人になるとどんどん体も脳も衰えてやがて死んでしまうという誰も逃げられないことについて苦悩し、悲観しすぎる人や楽観しすぎる人など様々な人の生き方について深く悩んでいたのです。
そしてお釈迦様は29歳の時、この苦悩から脱却するために王子という立場も家族も捨てて城を出て、2人の仙人を尋ねました。ところがなかなか思うような答えが出なかったので、自分自身で苦しい修行をすることに決め、断食や呼吸を止めるなどの苦行を6年間続けました。
修行をした後のお釈迦様の足取り
6年間苦行を積んで体は骸骨のようにやせ細ってしまいましたが、結局答えは出ませんでした。39歳になったとき大木の下に座って人生を振り返ってみたところ、自分は王子様としての何不自由ない暮らしと苦行という両極端な人生を経験しそれが極端な考えを生んでしまったのだということを悟ったのです。
その悟りについてお釈迦様ははじめは5人の人に伝えただけでしたが、その後80歳で生涯を終えるまで各地方でたくさんの人に説き教えたといわれています。
お釈迦様にはたくさんの弟子がいましたが、その中に10大弟子と呼ばれる人がいました。彼らはそれぞれ修行徳目の中の一つについて優れていました。
例えば舎利弗は物事の道理を判断し正しく処理ができる「智慧第一」、目けん連は何事も自由自在にできる不思議な力を持っていたため「神通第一」、魔訶迦葉は煩悩を払い去る修行に熱心だったので「頭陀第一」とそれぞれ呼ばれていました。
ほかにも物事にとらわれない「空」の概念をよく理解していた「解空第一」の須菩提や、「説法第一」で布教に尽力した富楼那などの人がいました。お釈迦様はその優秀な弟子たちとともに仏教を広めていったのです。
仏教では何を教えているのか
仏教はお釈迦様という仏が伝えた教えのことで、39歳の時に悟りを開いてから仏滅の(亡くなった) 80歳まで教えていたことが現在まで伝えられています。
それらの内容については「お経」という経本に記されています。その数は7,000以上もありすべてを読み解くことは困難ですが、ここでお釈迦様が伝えたいことは「人々が本当に幸せになれる道」なのです。
その道は二通りあり、一つは目的地である「本当の幸せ」、もう一つは「目的地にたどり着くまでの道のり」のことについて説いています。
お釈迦様の伝えたい本当の幸せとは、お金や名誉などではありません。それらは苦労して得たものであっても一時的な喜びであり、次から次へと欲が出てしまい結局苦労ばかりすることになり、本当の幸せとは言えません。絶対の幸せを得た親鸞聖人は、それは善でも無念でも尋常でもなく口では言い表せず想像もできないような不可思議なものだと語っています。
また目的地への道のりとは、変わらない幸せに導くために必要な「方便」のことで、結果には原因があるということが説かれています。
仏教の基本的な教えとは何か
仏教では、大まかに、本当の幸せを目的として、その目的地にたどり着くまでには道のり、すなわち方便が必要であると説いています。ではそのためには具体的に何が大切だと教えているのでしょうか。
仏教ではまず「苦しみを受け入れる」ということを基本としています。苦しみは克服することが大切と言われがちですが、お釈迦様は苦しみがあって当然と理解した上で、どのように生きていくのかを考えることが大切だと説いています。
人生は思い通りにならないのが世の常ですが、向かってくる苦しみを克服しようとするから苦しいのであって、苦しみがあることが人生だという真理を受け入れることで気持ちが楽になって前に進むことができ、人生を楽しくすることができると述べているのです。
その上で世の中のものは常に変わっていく「諸行無常」と世の中のことは互いに影響しあっているという「諸法無我」、そして諸行無常と諸法無我を理解することで悟りの境地に立てるという、「涅槃寂静」の3つをお釈迦様の真理として仏教では教えています。
まとめ
お釈迦様は何不自由ない生活と苦しい修行という両極端な体験をしたことで悟りを開きました。それぞれの経験を通して、苦しみをありのまま受け入れようという気持ちになり、それで気持ちが楽になって本当の幸せを得ることができたのです。
苦しみを乗り越えるためには更なる苦しみが伴いますが、それが人生に何度もあれば生涯にわたって苦しみ続けなければいけません。
人生には苦しみがつきものだと理解して受け入れることで、苦しみとともに生きていく方法を見つけ出すことができるというのがお釈迦様が説いた仏教の教えなのです。