三法印と四法印とは何を指すか、諸行無常・諸法無我・涅槃寂静・一切皆苦それぞれ理解してみよう

仏教は日本人の身近にあるものですが、宗教に深く関わっていない限りその教えに踏み込んで考えたことのある人は少ないのが一般的ではないでしょうか。お盆やお彼岸に仏壇やお墓の前で念仏を唱えたり、自分や家族の宗派は分かっていても具体的にどんな教えかよく分からないという人が多いのが現実です。

実は仏教は核となる教義があり、その教えを中心としていろいろな宗派や教団が形成されてます。ここでは教義の核となる言葉について説明しますので参考にしてください。

仏教はどんな宗教なのか

仏教は紀元前5世紀頃、インドの釈尊を開祖として開かれた宗教です。キリスト教やイスラム教とならんで世界各地の国々に広がっており独自の世界観と教義からなる宗教といえます。釈尊というのは釈迦世尊の略称で釈迦族の世尊、つまり釈迦族の尊い人という意味で幼少名のゴータマ・シッダールタや仏陀などいろいろな呼び方があります。

仏陀とは迷いの眠りから覚めた人のことを表しており、古代インドでは釈尊に限定した呼称ではありませんでしたが、仏教が組織化されるにつれ仏陀といえば釈尊を表すようになったようです。釈尊が説いた教えは最終的には解脱し涅槃と呼ばれる境地を目指すことです。ダルマと呼ばれる法とそれに基づく教えを出発点とし、一切の煩悩や束縛から離れて精神的な自由を得る解脱に至り涅槃の境地を目指します。そのためには悪業はもちろん善業からも解放されることが必要で、あらゆる迷いやこだわりに象徴される煩悩から解放されることで迷いの世界である輪廻から抜けだし涅槃の境地に至るとしています。

三法印と四法印の意味と違い

三法印は仏教の核といえる3つの教えのことをいいます。法印の法は決まりのことで真理のことです。仏教だけでなくヒンドゥー教やジャイナ教でも宗教の思想上の概念を表すとして大切にされており、仏陀の悟った絶対で普遍の真理のことを表します。

法印は仏教が真理であることを表す標識のようなもので、それ以外の教えと区別する目印の意味があります。旗印という言葉が自陣と他の陣を区別するために使用されていますが、それと同じような役割だと考えればいいわけです。つまり三法印とは仏教を信じる人達が共通してもつ思想、真理であり具体的には諸行無常、諸法無我、涅槃寂静のことです。これに一切皆苦を加えたものが四法印で四本法、四種法印と呼ばれることもあります。

三法印や四法印がいつから仏教の代表的な教えとなったかは定かではありませんが、お経のあらゆる所に三法印が記されており、経典によっては四法印が並べられています。

三法印の諸行無常と諸法無我とはどんな意味なのか

三法印や四法印は仏教の真理であり三法印は諸行無常、諸法無我、涅槃寂静、四法印はこれに一切皆苦を加えた教えだということは説明しました。それでは諸行無常、諸法無我にはどのような意味があるのでしょうか。

諸行無常は日本の古典でも知られているので知っている人もいるかもしれませんが、諸行無常とはこの世のあらゆる現象は常に変化しており永遠に存在するものはないということを意味しています。諸行とは物事を生みだす作用とその作用により生み出される事象で、因果によって生み出されるものは永遠ではないということです。一切有為無常と表現されることもあり有為により生じる事象、つまり因と縁が合わさって生じたものはたとえ人の生死であっても永遠ではないということを意味しているのです。

諸法無我もよく似た意味で、人や物の関わりによって生じる事象に普遍的なものは存在しないということです。諸法は現象を作り出す全てのもの、無我は我がない、つまり変化しない我はないという意味です。

三法印の涅槃寂静と四法印の一切皆苦の意味

三法印の涅槃寂静と四法印の一切皆苦の意味

三法印のうち諸行無常と諸法無我について説明しましたが、残りの涅槃寂静はどんな意味なのでしょうか。涅槃が仏教の目指す最終的な境地であり世界であることは説明しましたが、実は涅槃寂静は解脱によって煩悩から解放されたどり着ける涅槃の静かな安らぎをさしているのです。仏教用語で説明すると智慧で対象を正しく見極めることで得られる境地のことですが、ここでいう智慧とは人ではなく仏の智慧であり煩悩を断つ仏道修行で得られるものです。そしてその智慧によって、はじめてこの世の道理を煩悩にとらわれることなく正しく見極めることができると説いているのです。

それでは四法印の一切皆苦はどのような意味なのでしょうか。文字だけを見ればこの世の全てのことが苦しいと表現していますが、その通りで一切皆苦の一切は諸行無常の諸行と同じ意味、つまり全ての現象は無常でないがゆえにただ苦しいものだと言っているのです。身の回りに溢れている無常なものが人を苦しめ心を乱すという思想は仏教思想のなかで大きな意味合いをもっており、だからこそ自らを縛る煩悩から解き放たれることが大切だと説いているのです。

まとめ

仏教の教義の核となる三法印と四法印について説明しました。普段から身近にある仏教ですが、教義で使われている短い言葉のなかには深い意味が込められていることがわかりました。

仏教は長い年月によっていろいろな宗派ができましたが、現在、我々が何気なく使用している言葉には仏教用語に由来するものもあり知ってみるとなかなか面白いものです。我々の祖先や古の人がどんなことと向き合ってきたのか、苦難をどう乗り越えてきたのか、仏典に記されている教義は宗教を知るという意味だけでなく先人の知恵や歴史を知るという意味でもとても興味深いといえます。